技術開発情報

東洋電機技報 第125号

※ 技術論文、開発レポート、製品解説については東洋電機技報本文からの抜粋です。

技術論文

電気鉄道車両の空転・再粘着制御
Anti-slip Re-adhesion Control for Electric Train

大石 潔、佐藤 正健、牧島 信吾、上園 恵一、保川 忍
Kiyoshi Ohishi, Masatake Sato, Shingo Makishima, Keiichi Uezono, Shinobu Yasukawa

The improvement of adhesion characteristics is important in electric train. We have already proposed the anti-slip/ skid re-adhesion control system based on disturbance observer and speed-sensor less vector control. Toyo Denki has already applied the control system to VVVF Inverter in commercial use.
This paper shows merit and demerit of the control system based on disturbance observer, and proposes a new control method of generating torque command based on slip acceleration in order to improve the demerit of the present control. Numerical simulation shows the new control method gets fine performance without trial-and-error adjustment.

<概要>
鉄車輪と鉄レールの前後摩擦力である粘着力を用いて加減速を行う粘着式鉄道は、走行抵抗が少なく省エネルギーであり、高速運転が可能、騒音・振動が少ないといった、多くのメリットがある。そのため、高速鉄道から路面電車まで、世界中の鉄道に幅広く普及している。
一方で、粘着式鉄道は、鉄車輪と鉄レールの粘着力によって加減速することから、雨天時などで粘着係数が低下した際に、空転・滑走が生じやすいという問題がある。そのため、空転・滑走を抑制し、粘着力(接線力)を最大限有効利用するというのが、粘着式鉄道の古くからの課題といえる。
図1に、鉄道車両のレールと車輪の間のすべり速度に対する接線力の代表例を示す。図1に示すように、車輪とレールの間のすべり速度が0.1km/h程度で接線力がピークとなり、それ以上のすべり速度になった際は接線力が低下する空転状態となる。そのため、空転状態に至らないように接線力ピークの左側で運転することが要求される。また、できるだけ高い接線力を確保するために、接線力のピーク(粘着係数)付近で駆動することが望ましい。
主電動機により駆動される粘着式電気鉄道車両においては、空転・滑走を検知して、主電動機トルクを引き下げることにより再粘着を促す再粘着制御が用いられている。特に、1980年代頃から電気鉄道においても、VVVFインバータによる誘導電動機駆動が実用化し、高精度なトルク制御が可能になったことから、さまざまな再粘着制御手法が提案されてきた。
再粘着制御においては、空転の素早い検知、そして再粘着を促すのに適切なトルク引き下げがポイントとなっている。特に、再粘着に必要な適切なトルク引き下げ量をどのように設定するかというのは、重要な課題である。
再粘着制御のトルク引き下げ量の決定方法は、経験的に決められる場合が多い。そのため、試行錯誤的な現車試験が必要である。特に、車両パラメータや加速度などの条件が変化した際には、トルク引き下げ量の適正値も変わるため、形式ごとの試行錯誤的な調整が必要である。
それに対し当社では、速度センサレスベクトル制御および外乱オブザーバによる空転・再粘着制御を実用化し、鉄道用VVVFインバータに搭載している。本手法は、トルク引き下げ量の決定に、外乱オブザーバによる粘着力推定を用いることにより、時々刻々と変化する粘着係数に対しても適切に再粘着可能である。
一方で、これまでの外乱オブザーバによる空転・再粘着制御手法は、主電動機トルクと粘着力の定常的な比較により決定していたことから、再粘着時の過渡特性までは考慮にいれていない。そのため、それまでの手法に比べると理論ベースで引き下げ量の決定が可能ではあるものの、依然試行錯誤的な調整は必要である。
そこで、再粘着時の過渡特性も考慮した再粘着トルク引き下げ量の決定手法として、すべり加速度のフィードフォワード制御によるトルク引き下げ量の決定手法をこのたび検討した。その結果、試行錯誤的な調整不要で適切な再粘着が実現可能であることがシミュレーションにより確認された。
本論文では、現在の当社の標準的な空転・再粘着手法である、外乱オブザーバによる空転・再粘着制御について説明する。その後、新たに検討したすべり加速度のフィードフォワード制御による、トルク引き下げ量の決定手法を説明し、動力分散式電気鉄道および電気機関車への適用のシミュレーションを紹介する。

開発レポート

μGPCsH の二重化システム
Redundant system of μGPCsH

安元 宏平、小谷 郁雄、鬼塚 勇一
Kohei Yasumoto, Ikuo Kotani, Yuichi Onitsuka

Recently, for industrial system failure, the risk management how it is possible to decrease to an allowable level has infiltrated. Therefore, the improvement of further reliability has come to be demanded in μGPCsH that is our PLC.
Especially, the example of driving system for which reliability is necessary includes a film production line and water treatment plant, etc. These should operate 24 hours continuously without the system crashing.
Moreover, when the system crashes by any chance, the risk that the restoration cost is large and the risk that the poisonous substance leaks are generated. Therefore, the control is requested to be continued without the entire system's being downed even if the breakdown and the error occur in a part of the system. Additionally, it is requested to restore it promptly.
To satisfy such a demand , we introduce the redundant system of μGPCsH that starts development.

<概要>
近年産業システムの故障に対して、「リスクをどのように許容できるレベルまで低減できるか」というリスク・マネジメントが浸透してきている。これに伴い当社のPLCであるμGPCsHにおいても、さらなる信頼性の向上が求められるようになってきた。
特に信頼性が求められる駆動システムの例としては、フィルム製造ラインや水処理を行う環境設備などが挙げられる。これらはシステムがダウンすることなく、24時間連続にて稼動する必要がある。
また、万が一システムがダウンしたとき、復旧コストが大きいリスクや有害物質が漏れるリスクが発生する。そのためシステムの一部のユニットに故障やエラーが発生しても、システム全体をダウンさせずに制御を継続し、それに加えて速やかに復旧できることが求められている。
本稿ではこのような要望に応えるため、開発に着手したμGPCsHの二重化システムについて紹介を行う。

※ 第1号~第104号は目次のみの掲載です。


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